アニメーション監督への道

第一章・アニメの仕事、ちょっとだけ教えてあ・げ・る(2009/2/16)



アニメの仕事を選ぶにあたって、あまり一般的に知られていない作品の制作過程や、それぞれの役割分担などをおおまかに知っておく必要があるでしょう。
この章ではそんな業界の仕組みをごくごく簡単ではありますが説明しようかと思います。





●この人たちはこんなことする人

※制作
アニメーションを作る上で、素材、人員等を予算とスケジュールに応じて動かす人。
映像として出来上がるまでのマネージャー的役割を持ち、全ての素材の所在、関わるスタッフの作業状況を把握して管理する仕事です。
主に動き回るのが制作進行。その制作進行を束ね、シリーズを通して管理、指揮するのが制作デスク制作担当と呼ばれます。
設定の管理、資料集め等を仕事の中心にしているのが設定進行。 さらに制作全体を統括し、作品の商業的成否において責任を持つのがプロデューサー
制作プロダクション、放送局、最近では原作を持つ出版社などにそれぞれ存在し、それぞれの分野において作品に方向性を与える最も権限のある役職です。

※脚本家(シナリオライター)
エピソードを決められた時間に収まるよう文章にまとめる人。
その人たちを束ねるのがシリーズ構成です。
作品の傾向がぶれたり、全体を通しての分量、お話の起伏のバランスが崩れないよう管理し、あらかじめ方向性を示すための構成表を作成します。
脚本があがった段階で指示通りのものになっているかどうかのチェック、修正をするのも仕事の一つです。

※コンテマン
出来上がった脚本を元に、作業台本となる『絵コンテ』を作成する人。演出が兼任する場合もあります。
『絵コンテ』には舞台となるロケーション、登場人物、カメラワーク、セリフや芝居内容、必要尺など基本となる情報が全て書込まれています。
時には音楽ライン(BGMの指定)も書込む事があります。

※演出
出来上がった絵コンテを元に映像プランを作り、各パートにそれを指示して映像化する人。
作画、色、背景、フィルムを全てチェックし、問題があればその都度修正の指示をだす仕事です。
声や音をつける段階で、作ろうとしている画と音がちゃんとマッチしているかどうかのチェックもします。
この演出のチーフにあたるのが監督です。全体を通して統一感を持たせるために、演出にあらかじめ傾向を指示しておきます。
監督の場合は、シリーズ構成の段階からチェックにあたります。そこで全体の傾向が決まったら音楽、キャラクター、美術、など画面作りに必要な素材作りに入るための打ち合わせを各セクションのチーフと行い、上がって来た物をチェックします。
それらの設定を元に各話の演出が映像化したものをチェックするのが一番大きな仕事です。

※キャラクターデザイン
アニメーションにする上で動かす元となるキャラクターのデザインをする人。
全身図(前、横、後ろ)、表情、影の付け方などを指示表に起こします。
最近はコスチュームデザインや、サブキャラクター、メカなど細分化される傾向にあるようです。

※美術
物語の舞台となる場所(背景)の絵を作る人。
色味や画風の統一をはかる人を美術監督、元になる設定を線画で起こす人を美術設定と言います。

※原画
絵コンテ、各設定を元にレイアウト(キャラの配置、カメラの動き、ロケーションが分かるように絵にする作業)をとり、決定されたレイアウトを元に基準となる動きの絵を作る人。
実写で言えば役者さんにあたります。
この原画マンのチーフにあたるのが作画監督です。キャラクター設定にあわせて原画マンの作った画を整えます。時にはアクションの修正も行います。
最近はさらに総作画監督という役職が増えましたが、テレビシリーズが商品化されて一つのパッケージになることが当たり前になってきたために、統一化をはかる必要がでてきたのが最も大きな理由と考えられます。
総作画監督はキャラクターデザイナーが兼任する場合もありますが、シリーズを動かしている間はキャラクター設定も膨大な数になるので大概別に人をたてます。

※動画
原画を元に動きがなめらかに見えるよう、間の絵をいれていく人。
映像はフィルムの場合1秒間に24枚、ビデオでは30枚で構成されています。
ただし人間の目は一般的に8分の1秒以下の速度にはついていけないとされていて、8分の1秒止まった画でもそれを繋げてみせると動いていると錯覚してしまいます。
いわゆるパラパラ漫画の応用ですが、これを利用しているのがリミテッドアニメーションという手法です。
本来1秒という尺を埋めるために必要な24枚の画の間を人間が視覚的に反応できない速度の間止めることによって、作業負担を軽くしています。
これによって、キャラクター一体について本来1秒間24枚必要な画を8枚で済ませているのです。
それでも一人のアニメーターで全てを描くのには多いので、原画マンはキーになる動きの部分を、動画マンはその間をそれぞれ分けて作業しています。
この動きが原画の要求する内容とあっているか、画は崩れていないかチェックするのが動画検査です。

※仕上げ
上がった動画に色を付ける作業をする人。
この作業の元となる色のモデルを作る人を色彩設計、色彩設計が作った設定を元に塗り色をシチュエーションに合わせて指示するのを色指定、上がった仕上げデータに塗り間違いなどがないかチェックするのが仕上げ検査です。
アニメの塗りはべた塗りで実写に比べ平坦に見えるので、その平坦さをカバーするために凹凸をつけたように見せるのを特殊効果と言います。

※撮影
上がった背景、仕上げデータを重ねて連続した画として繋げる作業をする人。
光の処理や、本来平面に描かれている物を立体に見せるための奥行きをつくるフィルターをかけたりします。
これらの処理を決めたり、上がったフィルムを真っ先にチェックするのが撮影監督です。
2Dと3Dはまったく表現方法が異なるので、3D監督は別に表記されることが多いです。

※編集
フィルムを決まったフォーマットに合わせて尺調整する人。
大抵フィルムは後で心地いいタイミングに調整することを目安にフォーマットより長めに作られています。それを切って行く作業をします。

※音響
出来上がった映像に声、音楽、効果音などを入れる人たち。
効果音を作ってはめこむ人を効果。声、効果音、音楽などのバランスを取る人をミキサー。さらに全体を見て各所に指示を与える人を音響監督といいます。
音響監督は監督(チーフ演出)が兼任する場合もあります。
人によって仕事の幅はさまざまですが、キャスティング(配役を決める事)、アフレコ時の演技指導、音楽ライン引き(曲をあてる作業)、仕上がりのチェックが主な仕事です。
キャスティングのみ別の人がたったり、音楽ラインを監督が引いたりと作品によって色々違います。


と、とりあえずフィルムになるまでの役割分担をざっくり書き出してみました。この後の作業はすみませんが割愛させて頂きます・・・とはいえ、これだけでもものすごい分業がわかるでしょ?


●アニメはこうしてできるんだね

企画立案の部分から説明するとかなり長々と面倒くさい文章になるので、そこは割愛させて頂いて、現場におりて来てからのお話をさせて頂きます。
そもそも監督を目指している方からの質問を受けてのレポートなので、ここは監督としての私目線で書かせてもらいますよ。


1)シリーズ構成

このシリーズはどう始まり、どう終わるのか。テレビ作品は始まった時には枠(時間帯や放映期間)が決まっているものですから、その枠の中に収まるように作品を調整しなければなりません。
一本一本のエピソードの盛り上がりも重要ですが、シリーズを通してムラがあってもいけません。そうならないために事前に設計図が必要です。それが『シリーズ構成表』。
これがないと各話バラバラのボリュームでシナリオが上がってしまって散漫なシリーズになってしまいます。
この作業を監督、シリーズ構成、プロデューサー、原作物なら原作者、出版社を交えて行います。
時には世知辛い大人の事情というものもあり、想定していたものより期間が短くなってしまったり、泣く泣く構成を変更しなければならない事態もあったりします。
そんな時は特別ですが、基本的にはこの始めに作った構成表を基準に作業は進んで行きます。

2)設定発注

キャラクター、メカ、小物、美術などまず画面作りに必要な設定の発注をします。ここでの発注はまずメイン設定のみ。各話の設定はその都度行います。
打ち合わせは各設定マンと監督とのやり取りです。
上がって来た物をチェック、修正を繰り返し決定稿にします。
チェック者は監督、プロデューサー、原作物なら原作者、出版社。

3)キャスティング

キャラクターが出来上がったらメインになるキャストを決めます。決め打ちでいってその役者さんでいければ問題ないのですが、スケジュールや予算の都合上、必ず選んだ役者さんでいけるとは限りません。
一番ネックになるのはスケジュール。毎週決まった曜日に複数の人を集めるわけですから・・・あちらをたてればこちらがたたないこともある訳です。
で、よくあるのは、収録の曜日、時間帯をまず決めて、その日都合のいい役者さんの中から『オーディション』する。選ぶ役の数にもよりますが、150人くらいですかね。
芝居してもらって、イメージに合う人をみんなで検討して決める。
もちろん1日では終わりません。収録だけでも3〜4日かかります。
監督、プロデューサー、原作者で最終決定します。

4)シナリオ発注

構成表を元にライターさんにシナリオを発注します。普通のテレビシリーズなら大体4〜5人くらいのローテーションでしょうか。
まずはプロット(ラフシナリオ)をあげてもらい、シリーズ構成、監督、プロデューサー、原作者で検討し、OKがでたものをシナリオに起こします。
内容にもよりますが、プロットからシナリオ決定がでるまでに大体一ヶ月かかります。
一度動き出したら、毎月4本ずつ決定稿がでるような段取りでそれを繰り返します。

5)音楽発注

必要な音楽を想定してメニューを作成し、音楽家の方に作曲してもらいます。音楽メニューを作って音響監督に渡すパターンと、音響監督が作ったメニューをチェックして補足するパターンとあります。これは組んだ音響監督によります。
数十曲は作ってもらうので、全部上がるまで2ヶ月くらいかかります。
このあたりでOP、EDなどの話題もちらほら。作品に合わせて新規に作ってもらうのか、ありものを使うのか・・・パターンによってかかる時間も様々です。
もっとも目の届きにくい部分なので、始めにイメージを伝えたらもうあとはほぼ待つだけしかできません・・・。餅は餅屋ということですね。

6)絵コンテ

シナリオがそろそろ上がり始めるので絵コンテに入ります。何も指針がないと他の人に発注できないので、私の場合は1本目は必ず・・・時間が許せば2本目まで自分で切るようにしています。
仕事が重なっていなければ2本切る事自体はそんなに苦はありません。
絵コンテ作業は大体1本2週間。
作品によっては各話コンテマンでもコンテ作業時に音楽ラインを要求されることもあります。最近ではあまりききませんが、まぁ頭の片隅にでも置いといて下さい。
主題歌が上がっていればOP・ED作業もこのあたりでします。
OP・EDは監督が必ずやるもんでもありません。私も苦手な方なのであまりやらないです。
本編の参考コンテが出来上がったら他の方にも発注します。こちらも4〜5人のローテーションが普通だと思います。大体制作班の数が5班くらいなので。
これも上がって来たら随時チェックです。チェック機関は監督、プロデューサー、原作者。毎週1本ずつ決定稿がでるように繰り返します。

7)ボード・色・カメラテスト

出来上がった設定の色味を決め込む作業をします。まず美術ボードという美術設定に色を付けて画風を決定するための見本を作り、それに乗るようにキャラクターの色を作ります。
それが想定通りに画面で表現できるか、各フィルターをのせた上で一度撮影してみます。これはメインの作業です。
ここでのメンツは監督、美術監督、色彩設計、撮影監督。原作者チェックはキャラの色以外にはあまり入らないです。ここまでくるとプロデューサーもあまり口は出しません。
メインの画風が決まり、ローテーションが順調に動き出すと毎週ボード打ち合わせと色打ち合わせがあります。色打ち合わせは担当演出が慣れて来たらお任せする事が多いです。
カメラテストはこれ以後必要なとき以外はやりません。

8)演出打ち合わせ

各話の担当演出さんと打ち合わせをします。処理の仕方とか注意点とかをつめます。
コンテマンと演出さんが同一だと比較的楽なんですが、最近トータルでやって頂ける方は減ってきました。私もコンテだけの仕事の方が多いのであまり人の事は言えた義理でもないんですが。ていうか、あまり演出の発注はこないんですよね。コンテマンという印象が強いみたいです。
私の仕事ペースとしては月にコンテ2本に演出1本くらいでしょうか。もちろん監督してないときですけど。
切ったコンテを全部自分で演出するのはやっぱ無理かも。逆にコンテを減らして全部自分で演出するようにすると、手すき気味になっちゃったり・・・うまくいきません。
それは置いといて、打ち合わせをしたあとは演出さんに作業を肩代わりしてもらうことになります。
毎週1本仕上げて行くので、この打ち合わせも毎週1本ずつ繰り返されます。ただ、きちんとローテーションが成立していれば演出さんも慣れてくるので、後はくどくど説明する必要がなくなります。

9)作画

ここは監督目線でなく演出目線になりますが、作画打ち合わせを原画さん、作画監督さんとします。監督は演出さんに委ねている部分なので立ち会いません。
大体10人くらいの原画さんと打ち合わせをして上がって来た物をチェックします。
まずはレイアウト。チェック形態は作品によって異なりますが、もっとも多い段取りで説明すると
演出→監督→作画監督→総作画監督→美術監督
このレイアウトが美術と作画双方に戻され、同時進行で作業が進みます。 それが上がって来たら随時チェック。レイアウトでチェックをしているのでここでは演出と作画監督のみのチェックになります。
大体レイアウトから原画アップまで1ヶ月弱です。
作業が軌道に乗ったら毎週1本ずつ仕上げて行くので、監督チェックは毎週1本、演出は5本ローテーションなら5週に1本のペースです。
それが動画に回り作画作業は終了です。

10)仕上げ

色打ち合わせ(シチュエーションに応じた色を発注する打ち合わせ)をした後、上がった動画に色指定を入れて仕上げ作業です。
特殊効果もこの段階で入れてもらいます。
仕上げの検査は専門の方に委ねます。

11)撮影

背景と仕上げ上がりが揃ったら撮影に入ります。
撮影打ち合わせは監督、演出、撮影監督、担当撮影で行います。
演出がローテーションでなれてきたら、監督は外れます。
以前は撮影に入れる前にセルと背景を重ねて仕上がりをチェックする作業を演出がしていたのですが、デジタル化されてその作業が難しくなってきたので、今は殆どの会社が省略していると思います。
セル素材は仕上げ検査さんに任せているので、背景の素材が足りているか、内容が間違っていないかのチェックを演出がして、撮影に入れます。
タイムシートという撮影指示表を元に撮影された映像がデータで上がってきます。
これも毎週行う作業です。

12)カッティング

前述の『編集』と呼ばれる作業です。規定のフォーマットに合わせて尺の調整をします。
編集、監督、演出で毎週行います。


13)リテイクだし

上がった映像が目的通りの仕上がりかどうかチェックします。チェック機構は監督、演出、作画監督、色彩設計、色指定、撮影監督、特殊効果。
問題があれば時間の許す限り直します。
毎週、2〜3回行います。

14)アフレコ

出来上がった映像に合わせて声を吹き込んでもらいます。
音響スタッフ、監督、演出が立ち会います。
この音声データをのせた映像と音楽ラインを合わせた物が効果さんに渡り、効果音をつけてもらいます。画でわかりにくいところは説明書きを添えるのは演出の仕事です。
毎週決まった時間に行います。

15)ダビング

声優さんの声と効果音、音楽を合わせる作業です。音響スタッフと監督、演出で行います。ここまでの間にプロデューサー、原作者のチェックが入り、問題があれば直します。
毎週決まった時間に行います。

16)フォーマット編集

放送にのせるフォーマットに繋げた映像を作る作業です。ここまでにリテイクは全部終えるのが原則です。
監督、プロデューサーで行いますが、それ以前にフィルムが完全な形になっていれば監督が立ち会う必要はあまりないかと思われます。




以上が監督、および演出のおおまかな作業の流れです。ご理解頂けましたか?
もしかしたら『想定していた仕事の内容じゃない!』と思われた方もいるかと思います。また、『意味がわからん』という箇所があったら遠慮なく掲示板などで質問頂ければ、私が可能な範囲でご説明致します。
次は私が演出になってから今に至る経緯と時間の使い方についてお話しようと思います。
それでは第二章にて。


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