アニメーション監督への道

最終章・監督って楽な仕事?そこんとこどうなのよ(2009/6/5)



『監督って物見て文句言って楽な仕事だよね』なんて言葉もしばしば耳にします。
私自身時々監督業をやらせて頂いたりすることもあり、この非難めいた意見にさらされている内の一人になるのでしょうが、この言葉自体に別段怒りも感じませんし、否定する気もありません。
といいますのも、恐らく監督という職種についている人の中ですらこのような意見を持っている方もいるでしょうし、楽かそうでないかは本人にしかわからない・・・ぶっちゃけ『やってみなけりゃわからない』というのが実際だと思います。
もちろん携わる作品によっても違うでしょうし、その時のコンディションによっても変わってきます。一緒に作業するスタッフ構成なども大きく影響してくることでしょう。
なので一概に『こういうもの』という答えが出せる訳ではありませんが、今回は私が通常最もニュートラルな状態でしている仕事のスタイルを例に挙げてみます。
それを楽ととるか苦ととるかは皆さん次第という事で。ちなみにここでの私の場合はニュートラルと申し上げている通り、負荷がかかってない状態なので楽でも苦でもありません。





●佐山の一日

まずは一日の時間配分から。

*通常時

08:30   起床〜風呂洗い、ごく軽い朝食
09:00   トレーニング(筋トレやエクササイズ、ランニングの時もあり)
10:00   入浴及び猫の世話、身支度
11:30   出勤するもすぐには会社に入らず。途中昼食をとる。
13:00   就業
24:30   終業
25:30   帰宅〜飲酒しつつビデオ鑑賞等
26:30   就寝


*特別時(アフレコなど早出が必要な場合)

07:30   起床〜風呂洗い、ごく軽い朝食
08:00   入浴及び身支度(猫は夫にまかせる)
09:00   出勤
10:00   就業
24:30   終業以後通常時と同じ


・・・とこんな感じです。なんか独身のおっさんみたいな生活ですが。
労働時間は通常で11時間半、イレギュラーで14時間半。こう書くとサラリーマンの方などは『労働基準法違反』とか思われるかもしれませんが、以前のレポートで書いた通り大半の業界人は個人事業主なので、労働時間の設定は自己責任です。
一日8時間で仕事が終わるならそれに越した事はありません。だって残業手当なんてないしね。終わらないからこうなんだよ。だから誰にも文句は言えない・・・自分の仕事の遅さを呪うのみ。
会社員として監督やってらっしゃる方も中にはいるんでしょうけど、フリーの私にはそのシステムや時間配分はわかりませんので、それらしい人に聞いて下さい。
このレギュラースケジュールが5日間、イレギュラーが1日で一週間が構成されています。日曜日は基本休み。
この与えられた時間をおこづかいと考えて、そのやりくりを次に説明します。
レギュラー11.5pt×5+イレギュラー14.5=72ptです。

●佐山の一週間

*各ポイントにはそれぞれの現場への移動時間も含まれています

月曜日・・・シナリオ会議4pt=残7.5pt
火曜日・・・カッティング5pt=残6.5pt
水曜日・・・各種打ち合わせ(設定、絵コンテ、演出等)7pt=残4.5pt
木曜日・・・アフレコ・ダビング11pt=残3.5pt(イレギュラー日換算)
金曜日・・・レギュラー作業なし、自由日=残11.5pt
土曜日・・・V編集5pt=残6.5pt

レギュラー作業はこんな感じです。これは絶対に毎週行わなければならない上他のスタッフにも関わる作業なので、優先的に時間配分されます。これ以外の作業は残りの時間の中で自分で時間をやりくりします。
月曜〜金曜トータルで40ptになりました。
次にあげるのはイレギュラー及び個人作業にかかる時間です。

コンテチェック・・・コンテによりますが、平均的に自分がコンテを切る時間のおよそ三分の一。
          私がコンテにかかる時間が大体58pt、従ってチェックは19pt。
          コンテチェックは一週間に一本あるので40-19で残21pt。

設定等チェック・・・シナリオ、各種設定のチェック、修正=3pt。21-3=18pt。

ラッシュチェック・・・上がったフィルムのチェック、リテイク出し。トータルで4pt。18-4=14pt。

この他に自分でコンテを切る、各話のレイアウトを見る、及び直す、自分で演出する・・・という作業がありますが、14ptの中でやろうとするとどうしてもはしょられていくことになります。
ちなみに一ヶ月に1本(4話に1本)コンテを切って行く計算をした場合、58÷4=14.5なので収まりません。むりくり収めたとしても他のイレギュラー作業が全く入らず、いざというとき対応できないので5話に一本というペースにならざるをえないというわけです。
私は自分が監督する際、制作サイドに必ずこのペースを提示します(5本に1本)。それは、自分が確実にこなせると自信を持って言える限界ラインだからです。なので、ご理解頂けない場合はそのお仕事はお断りさせて頂いております。
作品に対して愛情がある故にコンテを一杯手がけたくなる気持ちも少なからずありますが、それをおさえないと結果的に身動きがとれなくなってしまうので、常に自身のキャパシティは考えています。それが『責任』だと思っているので。
58÷5=11.6で、残2.4pt分別の作業ができます。この間に各話のレイアウトを見たり、リテイク作業を手伝ったり、資料を集めたり、取材を受けたりをします。
気持ちにも余裕ができて、非常に理想的です。ここまでが私の中のニュートラルです。
でもアニメは生き物なので、そううまく段取り通りいかないことは当たり前。クレジットなど見て頂ければおわかりになるかと思いますが、いつのまにかコンテが3本に1本になってたりとか、原画描いちゃってたり(笑)とかあるわけですよ。
その時間をどう捻出してるかといえばもちろん日曜日。そしてトレーニング時間をなくす(そして太る、あるいは腰をいわす。私からトレーニングを奪わないで下さい。早死にします)。
日曜1日分で11.5、トレーニング五日分合わせて16.5pt。演出業務をするならこの時間は確実に必要です。
これでも終わらない場合は睡眠時間の短縮と、作業時間の短縮。でもこれは仕事が荒れるのでできるだけ避けます。


以上、私というごく狭い範囲ではありますが、こんなのが監督の生態です。
もし夢を打ち砕かれちゃった方がいたらごめんねごめんね〜。
でも『なんだチョロい』と思った方もいるでしょう。そんなあなたはすぐ業界に飛び込んじまいな。時はなりだよ!!



なんかまとまったのかまとまってないのかよくわかりませんが、ちょっと変わった読み物程度に楽しんで頂けたら幸いです。
私は職種も特殊だし、これまでの生活もあまり一般的とは言えない方なので若干(?)変わり者で、人の相談に乗れる器でもありません。
が、それでも何かヒントが欲しい・・・どんな些細なことでもいいから糸口を見つけたいという方はどうぞお気軽にご質問下さい。
今後も出来る範囲でお答えします。


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