アニメ業界就職への道

こちらのレポートはHNズゴックさんからの御質問を受けて作成しています。(2005/7/23)



<質問内容>
時々覗かせてもらっています。現在フリーターの男です。日記を読ませて頂きましたが、佐山さんも 専門学校出身だとのこと。そこで、質問させて下さい。自分はアニメの仕事をしたいのですが、専門 学校は実際の所仕事の役にたつのでしょうか。日記では最近専門学校の出身者が減っているとのコメ ントがあったようなのですが、だとしたら専門学校自体無意味なような気がして、一度学校に行くか、 可能ならこのまま職を探すか迷っています。また、何故映画の専門学校からアニメ業界に就職したん ですか?専門学校を選んだ基準ってなんですか?質問ばっかですみません。
(以上、一般掲示板より転載)



ズゴックさんはどうやら業界に入るためにまず下準備として専門学校に入ることが必要なのかどうか わからずに悩んでいらっしゃるようです。私は専門学校を経営している立場ではないので偉そうなことは 言えませんが、自分の経験からの個人的な考え方でお答えさせて頂きます。そのためにはまず私の業界に 入った経緯から御説明しないとならないようです。


●私がアニメ業界に入るまでの経緯

私は元々舞台芝居が好きで、趣味の範囲で舞台台本を書いたりしていた時期があったのですが、台本を書いていく うちに、ドラマや映画の脚本などにも興味が芽生え、シナリオライターになりたくて映画の専門学校に入りました。 そう、目的ははじめアニメではなかったんです。そうなるとズゴックさん的には『全然関係ない話じゃん』と思われる かもしれませんが、在学中に色々と思考が変化していくので、あながちそうとは言えないと思います。まぁ辛抱して 読んでみて下さい。

<専門学校の選び方>

これは全く私が個人的にそうしていただけであって、これが正しいとかそういうことではありません。参考程度に 考えて頂ければと思います。まず、専門学校に行こうと思い立った時点で最低限決めた条件は

・シナリオの講議があること

シナリオライターになりたかったのですから当然ですよね(^^;)

・『専門学校』の認可を受けていること

これは、認可を受けていないいわゆる『私塾』と呼ばれるところだと、年間授業料の割に講議が非常に少ないなどの 心配があるからです。色々資料を見ればわかりますが、専門学校(私塾はより一層)の授業料は案外高いです。高いお金を払うのに1日 2時間程度の授業では洒落になりません。その点、専門学校の認可を受けるにあたっては、最低何時間の講議が必要 になるとか(細かい規定はここでは省略させて頂きます)、さまざまな約束事があるので、授業時間に関しては心配 はないだろうと考えました。(授業内容に関しては、実際受けてみないと判りませんが、入る前に最低限回避できる 危険は回避したかったので) 認可を受けた専門学校は、履歴上短期大学卒業と同等の評価になるようです。必ずしも映画業界に就職できるとも限らない (この時、私は映画業界のいろはも何も知りませんでした)ので、いざという時に就職に影響がでないようにとの考えも あったかもしれません。

・募集人数が1科につき50人以下

人数が多いと共用の機材などがなかなか使えず、ストレスがかかるのではないかと考えたためです。とにかく自分が 欲している知識を最短の時間で手に入れたかったので、(何せ白紙ですから2年程度でそこまでスキルアップできるか 不安でした)自分がやりたい時に自習ができる環境が欲しかったのです。

・特待生制度

これはホントに後付けです。色々調べていて学費の高さに辟易としていた時、偶然見つけたような感じでした。その時 私の預貯金は1年通ってやっとぐらい・・・かといって、新聞奨学生になるとなると、卒業した後も借り入れ分の返済 があったりして、仕事に影響してくるのではという不安があったのでためらっていたのです。勿論特待生になれる保障 はどこにもないので、ものすごい賭けだったと思います。もともと賭けが嫌いな私にしては最初で最後の賭けだったかも しれません。とりあえず高校時代からやっているバイトは1日2時間続けるつもりで(保険として)、この制度に賭け ました。おかげさまで特待生として認可され、授業料は全額返還して頂きました。そしてこの返還された授業料が、就職 後の私の生活を支えてくれたのです(__;)


<実際の専門学校での生活>

私が入学した専門学校は、音響、照明、グラフィックデザインなど色々なジャンルの 芸術系総合専門学校でした。その中の『映画芸術科』というところに入りました。
日記にも書いたと思いますが定員40名のところ38名という定員割れでスタート。授業内容は講議として「演出論」「シナリオ基礎」 「撮影技法」「照明効果」「音響効果」「編集技法」「一般(映画に関係なく経済のしくみを学ぶ授業でした)」、実習として「撮影」 「照明」「音響」「美術(実際に6畳のセットを組み立てたりしました)」などを全員で学びました。
基本的なことを学んでいるうちに、日本の映画業界の伸び悩みに気付かされます。当時、まだSFXなどの普及が日本では遅れていて、 ロケーションや予算の低さなど色々な問題で邦画は低迷気味でした。ちょうど一般的に派手な映像を好む風潮になってきていて、どうしても ハリウッド映画にお客が集中しているような時代だったからです。当時の私もやはりSFXなどには興味があり、やりたいのはやまやまですが、 それをするための予算を日本で集めるのは至難の技であると言う現実をつきつけられ、少々落胆していました。
その時、学校の授業内容が一変します。コースを選択できるようになったのです。<アニメ>と<実写>に。
『アニメの方が実写より自分のやりたいことに近付けるかもしれない』と、私は「アニメコース」を選択しました。その時アニメコース に進んだのは私を含め13人。
授業内容は講議として「演出論」「作画」「彩色」「美術(今度は紙に描くほうです)」「撮影(固定台式になりました)」「編集」 「一般(著作権法に関しての講議でした)」、実技として「動画」「デッサン」「背景」「彩色」「撮影」「編集」などがありました。最初は一通り やるのですが、最終的には卒業制作に向けてそれぞれ自分の志望に別れていくわけです。
前述では「ライター志望」だった私は、途中の過程で映像に直接携わる「演出」の方に目線が向いていました。冷静に考えると、舞台台本を 趣味で書いていた時も、頭では舞台の配置やら照明の具合やらを考えていて、「演出」までひっくるめて楽しんでいたのです。その時の私は「演出」 という仕事がよくわからなくて、とりあえず自分にできる「文字にする」という行為によってそれを表現しようとしていたのだと自覚しました。私は「演出」 がしたかったのだと。とりあえず演出のいろはの「い」くらい覚えた今、演出になろうと心に決めて演出パートを選択しました。他のメンバーは殆ど作画志望で、 撮影、編集に至っては誰もいません。講師から「お前やれ」と言われ、渋々やることに・・・。当時は酷くイライラしたものですが、でもこれが結果としてもの すごく重宝したので、今となっては感謝の気持ちで一杯です。アニメの撮影台は非常に特殊な物なので、実物を目にしないと(そして細部までいじらないと)その仕組みを理解することは難しく、 仕組みを理解しないで撮影指示を出すことは極めて困難です。この時撮影班を兼任したことで、台を手入れしながらその仕組み、可能 なこと、不可能なことを理解することができ、実作業がとてもすんなり入れました。

無事卒業制作も終わり、みんなが就職活動をしている間、私は何故かずっと撮影台をいじってレポートを書く程撮影にのめりこんでいて、講師陣にひどく 心配され、色々就職の斡旋をして頂きました(^^;)。最終的には「演出助手」として雇い入れてくれる会社に決めて卒業。その翌年、この科はなくなって しまいました。ビジネス関係の系列専門学校と合併して、学校自体が巨大化し、遠くの方に移転したのです。しかし、映画芸術科は廃科。理由は「スペースの確保ができない」 ということでした。確かに照明やらセットやらを設置するスタジオはバカにならないし(とくにホリゾントが高いから)、そのくせ今回定員割れだったしね。
個人的にはいい学校だったと思うので残念でした。

結論として、専門学校選びのポイントは「自分が何を学びたいかよく考え、そのポイントにおいては妥協をしない」というところ でしょうか。ズゴックさんが何をめざしているかはわかりませんが、それを実現するために何が必要かをじっくり考えて調べる労力は、絶対に惜しんではだめです。


●就職に専門学校は必要か否か


さて、長い前置きになってしまいましたが本題ですね。これに関しては正直なところ『人それぞれなんじゃない?』と言うほかないのですが、それでは質問に答えた ことにならないので、ここに私なりの意見をまとめさせて頂きます。まとめ方としては、『専門学校に行く』『直接制作会社に就職する』のふた通りのパターンで、それぞれ のメリット・デメリットを挙げてみます。あくまでも私の経験上の意見であり、必ずしもこうなるということではありませんので、読んで、咀嚼して、自分なりの考えを持つに至る 参考程度にしていただければ幸いです。


<専門学校に行くことのメリット・デメリット>


メリットに関しては前述の長い前書きを読んで頂ければおわかりになると思いますので、省略させて頂きます。
デメリットとしましては、これはあくまでも人に聞いた話になってしまいますが(私はデメリットを感じて無いため)、「授業を受けても役に立たない」「時間の無駄」 という意見をよく聞きます。各会社の人事担当の人からも「専門学校出身者はあまり使えない」という声を耳にすることがあります。まぁ、『専門学校出身者』と全てを一くくりにしてしまう のは甚だ失礼な話ではありますが・・・。ここで人事担当の人が言っている『専門学校』には認可を受けていない『私塾』も含まれています。とにかく「アニメ」という特殊な職業 訓練場みたいなことをしているところを『アニメの専門学校』と称していると考えて下さい。わざわざ訓練を受けるのだから即戦力になると、行った本人も、また雇う側も期待するのでしょうが、 実際はそうではないことが多いようです。 どうしてこんな問題が起こるのか、いくつかの理由があると思います。その回避法を含め、以下に挙げます。

1)その学校の授業そのもののレベルが低い

前述した通り、学校はそれぞれ方針も違うし、授業の内容も違います。これに関してはもう下調べを密にして、検討して学校を選ぶよりほか方法はありません。授業の内容があまりにも上辺だけ で、途中で飽きてしまい退学する人も多いようですが、入学金や教材など、無駄になってしまう物はとても多いので、そうならないためにも策はいろいろ考えておいた方がいいと思います。まず 自分が何をしたいのか、何を覚えたいのか・・・それをよく思い返して欲しいです。そして、それを得るのに最適な学校探しをして欲しいです。>

2)学校で学んだことが完璧だと思っている人がいる

『専門学校』なのだから、専門的な知識はみんな身に着いていると思い込んで業界に入ってくる人が結構います。しかし、何度も言う通り学校の授業は千差万別。学校で教えてもらったことが 全てとは限りません。例えものすごく丁寧に指導してくれる学校にうまくあたったとしても、学校で教えてもらえることは本当に基本だけ。それをどう応用するかは個人次第です。
一度仕事として入れば、相手は生きた人間です。色々なトラブルもあるでしょう。それに対しての対処法をいちいち全て伝授してくれる学校などありません。断言できます。
専門学校は資格を与える場ではありません。そもそもアニメ業界に入るための資格なんてありません(制作になりたいのであれば、最低限普通自動車免許が必要ですが)。専門学校を卒業して きたからと言って、プロとして認められているわけではないと、就職する際に頭をリセットしましょう。学校ではもしかしたら一番優秀だったかも知れない人でも、就職した時にはただの新人 です。これまでの輝かしい功績など、先輩方は知ったことじゃありませんし、冷静に周りのプロの人たちを見るといかに自分が井の中の蛙であったかがわかると思います。
でも学校で習ったことが全てだと思って入ってしまった人(頭をリセットできない人)の中には、トラブルが起きるとおかしいのは『相手』の方であり、自分の言い分が何で通らないのか判ら なくて、対処するどころか益々悪化させてしまう人もいます。人事担当の人が『使えない』と称する人は、このタイプが一番多いのではないでしょうか。
私は以前、あるアニメ制作会社に社員として在籍しておりましたが、演出志望で入ってくる人の面接を任されることもありました。中には「いつ頃監督になれますか?」とか聞いてくる人もいて呆れた こともあります。そんなのは本人次第。なれる人はすぐなれるし、なれない人は一生なれないかもしれない。大体まだ仕事できるか出来ないかもわからないのに、そんなこと答えられるわけもなし。『演出』 とか『作監』とかは単なる肩書きではありません。時間が演出にしてくれるわけではなく、自分でスキルをためて演出になるしかないんです。
学校で覚えた知識は、使って初めて価値がでるもの。そしてその価値を他者に認められて初めてスキルといいきれるのだということを 常に念頭に入れておき、日々精進して頂きたいものです。


3)本人の学び方の問題

学校はそれぞれ・・・と何度も申し上げていますが、学ぶ方もそれぞれです。たとえすばらしい学校でも、学ぶ人の意識がそれについていかなければ意味がありません。何がしたいのか、何を 学びたいのかよく考えて・・・と前述していますが、本当にスキルアップに貪欲な人ならば、自分がやりたいことだけやっていれば目的に到達できるわけではないと、容易に判断できるでしょう。 例えば演出ならば、アニメの演出家になるにせよアニメ以外の映像には必ず触れておくべきだと思いますし、作画にしてもかわいい女の子だけ描いていてもうまくはなりません。しかしながら専門学校 では自分のやりたいことを集中してできるので、それに満足してしまって他に目が行かなくなる人が多いのではないでしょうか。学生時代はそれでよいとしても、就職したら間違い無く通用しない ので、早い内に学生気分から脱することを強くお勧めします。


<直接就職することのメリット・デメリット>


『専門学校で教えてくれる情報に碌な物はない』と始めから判断していたり、すでに業界に入っても充分通用するスキルを持っていると自信を持っている人が、こちらの道を選択するようですね。 こちらのパターンでもメリット・デメリットを私なりにまとめさせて頂きます。まずはメリット。

1)時間の短縮

専門学校に通う2年という時間が人より短縮できるので、努力次第で同じ歳の人より若い内に演出や作監、監督やプロデューサーになれるかもしれません。実際、仕事を始めてみるとわかるのですが、 この仕事・・・想像以上にきついです。というか体力勝負です。なので、若い内にある程度ポジションを確立しておくのは、後々安泰な生活を送るためには重要なことかもしれません。大体30歳で 30年ローン組んだら60歳でしょ。その時仕事続けていられるか考えただけでも((((°д°;)))))ガタガタガタブルブルブル

2)生のお手本がすぐ身近に!

学校では、自分とそう変わらない力量の人ばかりが集結しているのでなかなか『目からウロコ』という状況にはなりにくい・・・でも現場にはプロの人がわんさか。物凄い刺激です。触発されて自分の スキルも上がるかも。でもそれでスキルが上がるか否かは、やっぱり本人次第なのです。それはデメリットの方でちょっと触れます。

そしてデメリット。デメリットは、メリットの2)の項目をあてにして、『仕事場で色々覚えればいいや』と考えて入ってきた人の陥る罠です。

1)何もわからない

仕事場で色々覚えようと入ってきたのはいいけれど、誰も教えてくれない・・・そんなことがないとは言い切れません。現場は『学校』ではないのです。アルバイトで仕事をする場合、始めに雇うべき 立場の人が、戦力にならないと意味ないので細かに教えてくれますが、アニメの現場に『雇うべき立場の人』はあまりいないのです。みんな『雇われ人』。雇った側(会社)が 自分の預かり知らぬところで損失をうけようともあまり関係ありません。それよりも自分の仕事の方が大切です。なので、必要に迫られない限り、進んで新人に1から教えてあげようという人は多くは ないでしょう。ただ、スタジオによってはきちんと育成システムを作っているところもあるので、そういう下調べは大切です。育成システムのない会社に入ってしまった場合は、もう自己学習しか道は ありません。とにかく他の先輩方の仕事を盗み見するのです。でも、こっそりやらないと酷く嫌がられるので御注意。また、先輩方も鬼ではないので、質問には答えてくれるはず。自分が何を知りたい のか、どうしたいのか・・・きちんとまとめて質問してみましょう。そもそもみんな、自分の新人の頃のことなんか覚えてませんので、新人が何がわからないのかがわからない物なんです。だから教えて あげられない。でも、わからないことがわかれば、嫌な顔をせずに教えてくれる人はいっぱいいます。人にきくことを恥ずかしいと思わずにどんどんやった方がいいと思います。それが『やる気』ととら れて、見込みのあるやつと言う判断をしてもらえるかもしれませんよ。

2)生活がいっぱいいっぱい

いろんな噂が流布しているので、大体の業界の給料事情はお分かりかと思います。そう、とても安いです。生活することに精一杯で、仕事が流れ作業になってどんどん荒れて行き、スキルアップがおろそかになって、 ハッと我に返った時もう30歳にさしかかり・・・でもポジションの確立はできてない、そんなこともあるかもしれません。最初に荒れた仕事を覚えてしまうと、そこから自分のスキルや周りからの信用 を取り戻すのは大変です。これを回避するにはとにかく生活を支えつつスキルアップを求める・・・他人よりも多くの時間、寝る間も惜しんで努力するしかないです。人よりやってないのにばりウマっていう そんな天才な人は別ですが。
この業界、制作以外のパートは殆ど歩合制です。やった分だけお金になりますが、最初からそんなに数はこなせないことは想像できますよね。お金のために数をこなそうとすると仕事が荒れる。そして 信用が落ちる。落とさないためには丁寧にやる。お金にならないから生活苦しくなる・・・という図式。でも苦しい時期を乗り越えて信用を勝ち取れれば、ちゃんと普通の人と同じ生活できますから安心 してください。私も最初、前述の前置きの最後に書いてますが、学費の返還金をきりくずして生活していました。でも好きなこと仕事にしてるから、当時はあまり気にはならなかったかな。ふと気付いた時には 普通に人並みの生活をしていました。純粋にこの仕事が好きな人なら乗り切れるでしょう。でも、頭の片隅にお金をいっぱい稼ぐことがある人はちょっと厳しいかも。どんなに優秀な人でも1年でサラリーマン 並に稼ぐのは難しいと思いますよ。


上記のデメリットを書いていて思いましたが、業界直接inに大切なことは『やる気』ですね。昔から『自習』や『宿題』が嫌いでまともに遂行できなかった人にはお勧めできない道かと思います。
思いのほか長い文章になってしまいましたが、今の時期で考えると専門学校ならあと半年はありますよね?(就職ならいつでも入れるとは思いますが)よく御考えになって、御自分の向いていると思われる ほうを選んで下さい。少しでも参考になったのであれば幸いです。


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